ロックンロール紙芝居電子版

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LUNKHEADのライブをぴかぴかの渋谷ストリームホールで観る

銀座線の渋谷駅を宮益坂方面に降りて、ヒカリエのまえを通り渋谷署の方面へちょっと歩くと右手にあるのができたばかりの複合施設渋谷ストリームで、そこにライブ会場である渋谷ストリームホールがある。ぴかぴかのビルの6階にあるホール(ホールの定義がわからないのだけど)で中身がうまく想像できずわくわくする。思えば会場だってずっとそこにあるものではなく移り変わりがあり、この街で云えば今日ライブをするバンドを14年まえにはじめて観た渋谷AXはもうない。

この場所には以前別の建物があったが取り壊され更地になり山下書店もなくなり工事現場になり欅坂46がデビュー曲「サイレントマジョリティー」のMVを撮ったのちに渋谷ストリームはできあがった。「ストリーム」は"流れ"の意で、きっと真下に流れるとても小さな渋谷川(この川そんな名前だったんですね)から取ったものなのかなと勝手に思う。
ここでランクヘッドのライブを観る。「road to 20th Anniversary」というタイトルが付いているが、これは来年2019年が結成20周年なので19周年目にあたる今年からもう前のめりに祝ってしまおうという名目で回っているツアーであり、今日はそのファイナル公演なのだった。

ストリームホールはただの立方体、四角の箱といった風情で段差等はないけれどステージが高めで遠くでも見渡しがよいし天井も高いため広く感じる。体感と目測によるとたぶんリキッドルームよりは多く入るんだろうか、スピーカーが小さくてこんなサイズでもいけるのかさすが最新のホールだな、などと思う。でもこんな都会で地下でもないビルの真ん中で大きな音を出して大丈夫なのかな、なんてちょっと不安になる。

ライブは「闇を暴け」で始まる。この曲は6枚目のアルバム『AT0M』の一曲目を飾る曲なのだけど個人的にはこのバンドの"一曲目の長男"みたいに見なしており、イントロが非常にイケメンだというのもあってこの曲で始められると非常にテンションがあがるのだが、その後「冬の朝」「閃光」「HEART BEATER」「WORLD IS MINE」と続いてあれ? これはおかしいぞと思う。こののっけからの5曲はすべていままでのアルバム、ミニアルバムの(実質)1曲目で、わざとらしいというか組み立てがおもしろくてつい笑ってしまう(しかしこのバンドはアルバムをゆっくり始めるということを知らないな・・・・・・)。
アルバムを11枚重ねた彼らは常々"同じセットリストだと自分たちが飽きてしまう"と発言しており、そんなものなのかななんてのんきに思ってしまうけれど、近年はどんなツアーでも会場ごとにセットリストが大幅に異なりもうなんでもありになってきていておかしい。
活動の中でライブを重視しており、且つ演奏の上手さとそこに自負があるからこそ出来る芸当。だなんてファンの僕は思ってしまうけれど、昔の曲への久しぶりのうれしさとか、いまのバンドがやることによるバージョンアップとか、何が飛び出すかわからない楽しさがこのバンドのライブにはある。

中盤には新曲「心音」とデビュー当初の代表曲「体温」を続けて演奏する。このバンドを追ってきた者としては「心音」が誰のどういう状況に対して歌われている歌かはいやでもわかってしまうし(邪推なんだけどたぶん合ってる)、この曲の後だとさんざん聴いてきた「体温」もちがう響きかたをするので音楽はおもしろい。この2曲は曲名もキー(Em)も編曲も似ているので、ライブで並べることはバンドも絶対意識してるのだろうなと思う。

 "温かい手 やめない鼓動 命が燃えていることが"
 「心音」(2018年)

 "真夜中 君の手 耳に当てたら 命が燃える音がした"
 「体温」(2005年)

ランクヘッドの音楽は醒めているのに熱くて、尖っているのに優しい。という相反する要素が同居しているというか、そんな矛盾をずっと歌っているのだと思っている。だからライブだと特に年々表現力が増している小高芳太朗のボーカルに突き放されたり手をさしのべられたりと忙しい。また山下壮のハードロック上がりの音符の小さいエレキギター然としたギターも、合田悟のベースをわきまえないベースも、櫻井雄一のこれまた符割の細かく怖いくらい正確なドラムも、どんどん歯止めがきかない感じになっていて各々の音の上がり下がりがえぐいのでつい笑ってしまう。

小高芳太朗はMCで、メジャーデビューして想像した未来と今は違うものになってしまっているけど、それでもいまでもこうしてみんなの前でライブができているから、悪くない。なんて意味のことを笑顔で云う。それでもって、これからも永久保証のランクヘッドですからなどと叫ぶのを聞いて僕は笑えず決して笑えず下を向いておまえ云ったな、なんて思ってしまう(ファンなので)。

アンコール。真新しい渋谷ストリームホールで懐かしい「白い声」や「僕と樹」を演奏する彼らを観ながら、思えばいろいろな会場でこのバンドのライブを観てきたなと思った。
ぱっと思いつくままに並べると、渋谷AX(もうない)、渋谷クラブクアトロリキッドルーム恵比寿、新宿ロフト、渋谷O-CREST、新木場スタジオコーストCCレモンホール(うれしかった)、横浜クラブリザード(もうない)、名古屋クラブクアトロ、下北沢ガレージ日比谷野外音楽堂(うれしかった)、赤坂ブリッツ、渋谷O-EAST、・・・・・・そんなに多くないか。どの会場でもそれぞれの思い出が紐付いているし、このバンドにいろんなところに連れ出してもらったなと思う。
でも、まだ観てなくて、どうしても観たい会場がひとつだけあって、そこで観たいと思い続けることは絶対にやめないです。