ロックンロール紙芝居電子版

Rock 'n' Rollの「'n'」になりたい

さいきんのBUMP OF CHICKEN

BUMP OF CHICKENがアルバム『Butterflies』をリリースしたのが2016年の2月で、そこから約2年半のあいだにバンドは「アリア」「アンサー」「リボン」「記念撮影」「望遠のマーチ」「シリウス」「話がしたいよ」「Spica」の8曲をリリースする。既発曲が8曲で次のアルバムはどうなってしまうのだろうかと勝手に不安になってしまうのだけれど、最近のバンプについて考えてみる。

大雑把に云うと音がどんどんとさらに綺麗になっていておののく。ロックバンド然とした雑味が無くなり全体的に洗練という形容がしっくりくるような整った音。ただ変なアプローチが無いわけではなくて毎回新しい音的なトライアルがあるなとも感じて退屈しない。特にリズムについての挑戦のようなものが相変わらず盛んだなというか、近年は閉じたハイハットのチキチキの存在感がすごくて意図は測りかねるけれどなんか狙いがあるんだろうなと漠然と思う(だからキラキラしているのだろうか? 升さんまた無茶されてる・・・・・・なんて心配をしてしまう)。

たぶん藤原基央のソングライティング自体は大幅には変わらない(暴言すると飛躍的にレベルアップしたりとかではない、元から凄まじすぎるから)ところで、演奏面の表現はいろいろと模索し続けている風に見える。たとえばいわゆる下北系ギターロックバンドとして、2本のそれほど歪ませないギターをBPM180あたりで全弦かき鳴らす。みたいなフォーマット形成の一翼を担いたくさんのフォロワーを生み出したからこそ、最近のサウンドの変化が生きるというか、同じことはやらない何故なら過去にもうやったから的な意気をそこに感じるのだ。 

曲にバリーエーションを与えてるのはすべての曲にタイアップ(ドラマ、アニメ、映画、スマートフォンカップラーメン、ゲームなどなど、さすがに全曲ではないだろうと思って調べたら全部だった)がついているからではないかと想像したりもしていて、アレンジの面でいろいろ目新しい動きがあるし一つの方向性というか「なになにサウンド」を目指しているみたいなところが見えないので毎回聴くのがたのしみでしょうがない。たまにロックバンドのフォーマットから逸脱しようとしつつ、でもやっぱりバンドですみたいな肉体感もところどころに感じさせてくれるので(「シリウス」最高だったので戦う系アニメの主題歌もっとやって下さい)。

あと歌詞。スターシステム化(同作者の別の作品のキャラクターが登場するあれのことです)というのだろうか、最近の曲では過去のモチーフの再登場というか聴いていてにやりとさせられてうれしくなる瞬間がたまにある。大げさだけど彼らの積み重ねたディスコグラフィの歴史を感じてすこしだけ気が遠くなったりするのだ。たとえば以下の歌詞なんかがそう。

 "羽根は折れないぜ もともと付いてもいないぜ"
 「望遠のマーチ」

この一節を聴いた瞬間に16年まえに発表されたあの曲のことを思い出して固まってしまった。

 "飛ぼうとしたって羽根なんか無いって 知ってしまった夏の日"
 「Stage of the ground」 

(まとめます)でもこれ、ほんとうに次のアルバムはどうなるんだろうか。既発曲は8曲もあるしリリースされていないけど(なので聴けていないけど)「月虹」もあるのでオープニングとエンディングのサンドイッチソング(勝手につくった造語です)で挟めば立派なサイズになってしまう。まさかの2枚組だったり、もしかしたらベスト盤を挟んだりするのかもしれない。

ここのところほとんどがデジタルリリースだったしリリースやアルバムというフォーマットの形態にも音楽業界的になんか一石を投じそうなアクションがあるのかもなとびくびくしつつ、当の本人は下の引用のこんなことも歌ってしまっているのだけれど(こじつけです)、個人的にはふつうにアルバムを出してくれとささやかに願い待つしだいだ。

 "今までのなんだかんだとか これからがどうとか
  心からどうでもいいんだ そんな事は
  いやどうでもってそりゃ言い過ぎかも いや言い過ぎだけど"
 「話がしたいよ」